だいぶ前に一度取材したことがあるビジネスセンターは、ほぼ変わらずに存在した。さっそく中に入り名刺の作成を依頼する。出来上がるまでに時間がかかるので、2台ある PC
で調べ物をしたりすることもできる。ハワイのインターネットカフェ取材の前に、まずはここで軽く調査しておこう。
ところでこのビジネスセンターの奥にあるラウンジは、各クレジットカードのゴールドカード会員のみが立ち入ることが可能なようだ。私は過去に数年間、店舗接客の仕事をしていたのだが、その拙い経験から言わせてもらえば、ゴールドカードを持っている人で上品な客に出会ったことがない。自分が負担する支払いとなると、とたんにシビアになったり、無体なことを言っては値切ろうとするからこそ、お金がたまるのかもしれない。しかしぜひゴールド・ステータスにふさわしい品格を備えてほしいものだ。「金はあるけど世間知らず」というパターンが、いちばんみっともない。
誰もが一流と認めるであろう俳優、オーケストラ指揮者と時間をともにしたことがあるが、ふたりとも、こちらが申し訳なくなるほど腰の低い人物であった。一流の人物、一流の芸術、一流の技術などにたくさん触れて、わずかずつでも自分を向上させていきたいと感じたものだ。「ゴールド・カード」と聞くと、いつもそんなことを思い出してしまう。
PC のスペックなどを手早くチェックし、スーツケースを預かってもらって、いったんビジネスセンターを出る。
見学デッキへ出てみる。少々風が冷たいが、まぁ短時間なら大丈夫そうだ。私が乗るのとは別のノースウェスト機は、これから室内清掃が始まるような様子に見える。
列車や飛行機の客室清掃とは、特有の大変さがあるのではないだろうか。狭い空間にたくさんのシートが並び、また袋状の部分や突起部分があったり、食べ物関係の汚れも少なくないだろう。きちんと清掃されたキャビンは、快適な旅にはとても重要だ。お疲れさんです。
見学デッキからビル内に戻り、うろうろ歩いてレストランを比べる。ハワイへ行ったら、なかなか日本人好みのハンバーグに出会えないのではないかと思っていると、不二家レストランのサンプルが目に入ってきた。「デリシャス・ハンバーグ・ステーキ」と書いてある。とたんに私の消化器系が騒ぎ出した。よし、ここだ。
店内はそこそこ賑わっている。
昨年の 2007
年春にも、ハワイ出発へ向けて兄とその娘二人の合計4人でこのあたりを歩いていた。そのときはこの、不二家レストランだけが閑古鳥が鳴いていた。その年の初旬、不二家の工場で期限切れの牛乳を使用していたことが明るみに出たためだ。この事件を発端に、関連する問題も噴出して大きな問題となった(不正な製造がおこなわれたのは 2006
年秋。クリスマスや年末年始の商戦を乗り切ったあとに内部告発があった)。
厳密には菓子の生産工程とレストランは直接関係がないのかもしれないが、いったんブランドに悪いイメージがつくと、一気に影響が広がる。その時も兄や姪たちと交わした会話は、「んー、まぁ問題ないだろうけど、一応やめとくかぁ」だった。
のんびり食事をしたり土産物屋をぶらついたあと、出来上がった名刺と、預けてあったスーツケースを受取って出発ロビーへ向かう。
今回はノースウェスト航空のウェブサイトで、事前にチェックインを済ませてある。そのため空港では、自動チェックイン機にパスポートの写真面を読ませるだけで、必要な手続きはスピーディに行われる。
また、今回ももちろん紙の航空券は持っていない。パスポートと、ホームページを印刷した紙が、チェックイン時の証明になる。
自動チェックイン機は非常に簡単なものではあるが、しょっちゅう使っている人をのぞけば、一瞬たじろいでしまう場合もありそうだ。しかし、係りの人がいるので全く心配はいらない。
このノースウェストの自動チェックイン機に表示される日本語も、以前に比べて少しはマシになってきた。
スーツケースを預け、リュックをひとつ担いでセキュリティチェックへ進む。
セキュリティ・チェックの手前には、機内に持ち込めない物品について、現物を用いて分かりやすく展示してある。うっかり持って入ってしまいそうなものの代表格が並んでいる。
この写真を見て、これもダメなのかぁと思う方も少なくないのではないだろうか。というか、そもそも機内では飲んで食って寝るだけのことしかしないのだから、あれやこれやと持ち込むこと自体、考え直したほうが良い。乾燥した機内で女性は保湿化粧水を手放せないだろうから、そんな場合は小さな容器に詰め替えておくことがポイントだ。
と言っておきながら、自分も決して少なくない持ち込み荷物「キャリィオン・バゲージ」を抱えている。金属探知ゲートの手前でプラスチック製のトレーや小さなかごに、手荷物や身につけている金属物を並べてみると、あまり人のことは言えない気もしてきた。
だいたい、ノート PC
が2枚あることからしてノーマルな客ではないかもしれない。それに今回の旅行用にそろえた小道具もある。ひとつはコンパクトなデジタルカメラ。もう一つは
BOSE 社のノイズキャンセリングヘッドフォンである。
これまで使っていた大きいデジカメは、今回はカメラバッグに入れてさらにスーツケースに入れてある。コンパクトデジカメは機内食などの撮影や、現地での気軽な撮影用にと、秋葉原のヨドバシカメラで購入した RICOH
社製の Caplio R7 である(※)。このカメラ、じつはほとんど宣伝もしていないのに、かなり売れているという変わりダネ商品で、28mm(※)から始まる光学 7.1
倍ズームをはじめ、値段の割にはお買い得なカメラだ。スチルカメラであれムービーカメラであれ、一般人向けのものはどうも望遠側ばかりが充実していて、引き(広角)のほうが充実していないことが多いのだが、28mm があればたいてい事足りる。
※
RICOH Caplio R7
これから購入を考える方は R8 も視野に入れよう。有効画素数が約 1000 万画素に向上し、ブラックの渋いデザインになっている。(→
RICOH Caplio R8)
※ 28mm
35mm フィルムカメラ換算としての値。(→焦点距離って何?
35mm換算って何?)
セキュリティチェックと出国審査を、
短時間に続けて抜けてしまい、空港ビルの「制限区域」に入る。免税店が並ぶ領域だ。改札のようになっている出国審査のゲートを抜けると、目の前に小さなカートが並んでいるのでさっそく利用する。もう最近は、自分にとって楽であるかどうかが、行動する際の判断基準になり始めている。たとえ金を払う必要があるような場合でも、それで楽な方を選べるなら素直にそちらを選んでしまう。
とにかく、まっさきに自分が進むべき出発ゲートの待合室を確認しに行く。まだまだ時間に余裕があるため、ほとんど人もいない。案内図を見ると、出発ゲートのフロアからエスカレータでひとつ降りたところに、インターネットコーナがあるようだ。さっそく見物に行ってみよう。
「インターネット・キオスク」と呼ばれるコンピュータがたった2セット
、がらんとした空間に置いてあるだけの場所だ。インターネット・キオスクが利用されることよりも、ユーザが持参したノート
PC を使って、無線 LAN によってインターネット接続されることを想定しているようだ。すぐそばには、しっかり無線 LAN
アクセスポイント(アンテナ)が設置してある。
10分までごとに100円の、このインターネット・キオスクを利用するか、それとも自分の PC を利用して、1日500円の無線 LAN
接続アカウントを購入するか、必要と準備に応じて選ぶことになるわけだ。
しばらく、パソコンのスペックやネットワークの状況を調べて、ふと案内板を見上げる。ぼちぼち上のフロアにあがっておくか。
エスカレータでもとの出発ゲート前にあがってみると、さっきとは打って変わって大勢の人たちが椅子に座って搭乗開始を待っている。この時期にもハワイへ行く人は少なくないのだなぁ、と思う。
まず、ハンディのある人やビジネスクラスの人の搭乗がはじまり、そのあとにぞろぞろとエコノミーの客が列を作る。例によって予定の搭乗開始時刻19:15に少し遅れての搭乗開始だ。のんびり行きたいので、ほとんどの客が捌(さば)けるまで、椅子に座ってのんびりと待つ。それにしても設置してあるテレビ、NHK-BS1
の映りが悪い。搭乗開始のアナウンスをきっかけに、売店の店員がさっさとシャッターを閉めている。
だいぶ列が短くなってきたので、立ち上がって順番に並ぶ。ふと見ると搭乗口に看板が立っている。一般客と特別客の搭乗口の案内だ。General
Boarding はいいけど、特別クラスを示す Elite Boarding の文字が、なにかちょっとうらやましく見える。粛々と Elite
でない方へ歩を進める。
そういや、派遣労働者が多くなってきた昨今、正規雇用社員のことを「プロパー」と呼ぶ人がでてきた。これは日本特有の物言いではないだろうか。プロパー
には「正常な」、「適切な」という意味があるので、プロパーでない派遣労働者などは「正常でない人」ということになってしまう。英語の感覚がある人は、おそらく絶対に正規雇用社員を「プロパー」と呼ぶことはないだろう。ちなみに私も「正常でなく不適切な社員」である。
さっき自動チェックイン機で発行された、ペラペラの感熱記録紙のボーディング・パスを確認する。座席は63G、通路側の席である。一人旅では通路側のほうが気楽だ。少なくとも片側には他人の体がないということで、ずいぶんと気が楽だ。それに真ん中の席や窓側の席に一人で座っていてトイレに立ちたいと思うときは、たいてい隣の人は熟睡していたりするものだ。
今回も、エコノミークラスの足元のスペースが気になったが、前席の脚部は特に太くはなく、ほっとする。目の前の席には黒人の若い男が、幅の狭いエコノミー・シートに、どう体を落ち着けようかともがいている。
機は滑走路へ向けてゆっくりと動き出した