2007年4月3日、火曜日。
今回は、私の兄とその娘、つまり姪二人の合計四名でのハワイ旅行である。兄も二人の姪も、ハワイ旅行は初めてということで、だいぶ以前からあれやこれやと期待や不安を抱きながら、今日の出発日を迎えたようだ。
とくに、若い女性をともなってハワイへ行くことは、私にとっても少々気を使う部分である。化粧品の機内持ち込みはどうなのか、ショッピングに関すること、治安に関すること、いつもはほとんど気にしていないようなことも意識せざるを得ない。
私の兄は名古屋に住んでおり、姪たちは東京である。しかし、航空券の手配をしたときは、姪の次女のほうが名古屋だったので、私を含めて3名は中部国際空港発着、長女だけは成田空港発着の航空券を手配済みである。そのため次女はこの日のために、出発前日、東京から新幹線で名古屋の実家に戻ってきていた。購入した航空券の旅程どおりに動かねば、その旅程すべてがキャンセルとなってしまうからである。これは割引航空券であるがゆえの制限事項といえるが、だからといって、なにかと融通の利く「普通運賃」で航空券を買うようなことは一般人では考えられない。
名古屋11:02発の、中部国際空港行の名鉄特急に乗る。
名古屋市街の喧騒と都会的雑然を抜け、列車は知多半島を南下する。兄と次女は、すでにこの特急の一本前に出発した列車に乗っている。
沿線の民家の庭先に咲く桜がきれいだ。
この列車には乗車券のほかに「ミューチケット」が必要である。ようするに座席指定券であって、それ自体は350円なのでどうということはないのだが、私にとっては小学生のころから興味深く思っていたことが、いままた思い出される。
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ミューチケット
名古屋鉄道の特別車両券。基本的には乗車前に、乗車券とは別に購入するもので、こぎれいな車両に乗り込む権利と、その車両の特定の座席に座れる権利を示しているもの。
名古屋鉄道の「指定席」の考え方はやや特殊で、無人駅からの乗客や、前もって指定券を買わずに指定席車両へ乗り込んでくる乗客の利便も考慮している。車掌が車内で発行する指定席券は「座席の指定がない指定券」であったり、指定席データベースシステムと連携していない、車掌だけが管理する座席があったりするようだ。う〜む、名古屋はユニークだ。
名鉄特急は基本的に座席指定制になっており、指定券を購入し、その券面に表示された座席番号の席に着くことになっている。ところが、いざ乗り込んで、自分の座席を探し当てると、平然として誰かが座っているという「現象」に出くわすことが少なくないのである。
座るべき席をまちがって座っているのではない。はじめから指定券を持っていないのである。
これが感覚の世代差、あるいは地域差の現れであることは、小学生のころからなんとなくわかっていたような気がする。つまり、
「空いてんだから、座ったっていいじゃないか」、
「(予約した本来の人が)来たら、どけばいいじゃないか」といった感覚である。
ある意味、合理的ではある。
しかし、名鉄ロマンスカーに乗れることを何年も前から期待していたその小学生は、オルゴールを鳴らして名古屋駅地下ホームに入線してきたロマンスカーに、胸を躍らせながら乗り込んだとき、自分のために準備された「まっさら」な座席ではなく、別の人が厳然とそこに座っている状況を目の当たりにして、「ガッカリのどん底」に叩き落されたのであった。
そして、正当な切符をあらかじめ購入している我々のほうが、「すいません」といってどいてもらうことや、座っていたほうが
「なんだ、乗ってきやがったか、チェッ」
とでも言うような表情で、面倒くさそうに席を移る(また、同じことを繰り返している!)ことに、大きな違和感を感じていたものである。もちろん、座った席はなま暖かい。ひどい場合はゴミが残っていたりもする。
ただこのような現象は、座っていた人が一方的に悪いと言い切れない事情もある。利用率や利用実態である。特にこの名古屋鉄道の特急列車や特別車両の場合は、JR とはちがう特殊な事情、ローカル・ルールもある。
指定券を買わないまま空いている「指定席」に座り、車掌が来たらそのとき購入するというやり方が、その地域の旅客一般に了解されている場合、それほど問題視されない。とくに、長距離列車ではなく、頻繁にやってくる列車の指定席の場合、特定の列車の指定席を求めておくことは、かえって行動の自由さを妨げることにもなる。
しかし、前もってキチンと切符を買っている人と、何らかの区別があってしかるべきではないのかという気もする。
そのへんをシステム化しているものの一例として、JR
東日本の普通列車のグリーン券がある。普通列車、つまり鈍行列車のグリーン席なので、具体的に座席番号が決まっているわけではないが、グリーン車に立ち入ることができる権利としての「普通列車用グリーン券」が必要だ。
そしてこれが、乗車する前の「事前料金」と、乗車してからの「車内料金」では、値段が違ってくるのである(東京地域の普通列車が対象)。とうぜん、乗車後のほうが割高であり、その差は250円である。おお!なんと美しい公平なシステムなのだ!小学生のとき以来の胸の痞(つか)えが取れたような気分だ。
しかし長距離列車でもない日常的な列車にまで、グリーン車という特別な空間を求めるのは、大都市の公共交通機関特有の現象なのかもしれない。
そんなことを考えている間にも、先行している列車の兄から、「ただいま、○○駅通過中〜っ!」という、旅の期待にあふれたメールが届く。
中部国際空港に着く。
ホームから改札に向かう途中の、ガラス張りの小さな待合室に、兄が次女と二人で待っていた。時間には余裕をとっておいたので、すぐに移動することはせず、しばしここで旅の話などをする。
電車を降りて搭乗口まで、「段差」というものがないのもこの空港の特徴である。歩いて行くと広くゆったりとしたスロープや、エスカレータを応用した動く歩道のスロープで、段差や建物間の床面が結ばれている。
中部空港は何度か見学に来たことはあるが、実際にここから旅立つことは、私にとって初めての経験だ。
14:35発の成田空港行きの便までだいぶある。
中央コンコースに面しているスターバックスでコーヒとケーキを買い、丸テーブルを囲んで、パスポートや航空券などのチェックをする。
一息つくと、兄がもぞもぞと落ち着かない様子だ。飲食後の一服は、スモーカーには至福の時のようだ。空港ビルのわかりにくい場所にある喫煙ブースの、これまたわかりにくい案内看板を兄は目ざとく見つけ
、移動しようということになる。
チェック・イン時刻となり、カウンタで荷物を預けようとするが、今回は中部空港からホノルル空港まですべて ANA
便であるため、成田でいったん受け取らなくても OK
だと説明される。
しかし、成田では兄の長女と落ち合って、4人であれやこれやと荷物をひっくり返すことを予想していたので、あえて成田空港でいったん荷物を受け取るということにする。