花ぷら11.5(2010/2)
部屋は、レインボータワーと呼ばれる、ビーチにせり出して建つ客室棟の25階だ。さすがに眺めがいい。いかにも旅行パンフレットに出てきそうな風景が目の前に広がる。午前中のいま、逆光ぎみの太陽がワイキキの海面に反射してキラキラと眩しく輝いている。
左手にはワイキキホテル街、その手前にはヒルトンの敷地にある客室棟や大きな樹木、下のほうにはプールやレストランなどが見下ろせる。右手はもちろん美しい海が広がっている。景色の奥のほうには、ダイヤモンドヘッドが悠然として海に向かっている。
「ポート・ヒルトン」と呼ばれる浅瀬に突き出したピア(桟橋)には、いまは船が着いていないが、そのうち沖にいる観光用潜水艦アトランティス号の送迎用シャトルボートが入ってくるだろう。
部屋には小さな流し台がある。しかしキッチンではないのでコーヒメイカーがある以外、加熱ができる設備ではない。部屋の広さや設備も満足できる。
ラナイ(ベランダ)から入ってくる風がことのほか気持ちよい。窓を開け、波の音や遠くに聞こえる人々の歓声を聞きながら、きちんとベッドメイクされた幅広のベッドに横になると、とても心地よい。ひとり旅だったらこのまま心行くまで午睡をむさぼっていたかもしれない。きょうは、日本からの移動による疲れを取るため、軽くひと休みしよう。部屋を明るくしたまま、母も私も体を伸ばして休む。
1~2時間たったろうか、起き上がってみると、あいかわらず波の音が聞こえ、ゆったりとした風が入ってきている。身を乗り出してラナイを見てみると、置いてあるテーブルやいすに、小鳥が休みに来ている。振り返ると、母は未だ寝息を立てている。
ちょうどよい。気になっていたインターネット接続のチェックをしよう。
部屋のデスク上には、独特の形をした LAN ケーブルの台座のようなものが置かれている。試しにケーブルの先端のプラグを引いてみると、その台座は固定されているわけでもなく、かといって重量のあるものでもなく、結局ケーブルと一緒に手前に持ちあがってしまう単なるプラスチック部品だ。
PC を起動し、ごく普通の設定でウェブブラウザ開いてみると、ヒルトンのログインページへ強制遷移される。予想通りの展開だ。
しかし、おどろいたことにインターネット接続が有料としてある。私はリーズナブルなホテルの経験がほとんどなのだが、中でも気に入っているのは、ワイキキ・ゲートウェイとワイキキ・サンド・ヴィラである。この両ホテルは同じ日本人が経営していることもあって、日本人客には使いやすいホテルなのだが、早くから無料インターネット接続のサービスを提供していた。
それと比較すると、キッチリ金を取る仕組みを確立しているヒルトンには、正直ガッカリさせられる。
まぁそれでも、日本のブロードバンド並みのスピードが出るのだとすれば、致し方ないかとも思ったのだが、実際に接続してみると、これまた大したことのない、というか日本人の感覚では到底、有料サービスとは思えないほど「ダメ系」なのである。
そして更にひとつ、ガッカリさせられることがあるのだが、これについては後ほど書くことにしよう。
インターネット接続のメニュー構成としては、Standard と Premium というスピードの違い、そして Daily と 5days の利用期間による違いの、計4種類の中から選択し、部屋番号と名前を入力する方式になっている。もちろん、Premium のほうを選んだのだが、私が自宅で利用している NTT 西日本の「フレッツ ADSL」よりも体感速度が遅いという、惨憺たるありさまだ。簡単な計測では、Standard で上り下りそれぞれ 768kbps / 1,024kbps。Premium では 1,536kbps / 2,048kbps である(ADSL 方式では下りが速くなる)。
また、時間の計測はタイマーが秒単位でカウントダウンしていく方式で、フェアではあるが、なんとなく落ち着かない。
| ■ Daily Standard Internet Access |
| $15.99 + 0.75(TAX) |
| ■ 5-days Standard Internet Access |
| $65.00 + 3.06(TAX) |
| ■ Daily Premium Internet Access |
| $19.99 + 0.94(TAX) |
| ■ 5-days Premium Internet Access |
| $85.00 + 4.01(TAX) |
【VPN 接続と特殊なアプリケーション】
ヒルトンのインターネット接続ログイン画面には、インターネットを経由しながら、勤務先などの組織ネットワークと安全な通信経路を確立する VPN (Virtual Private Network) に関して下記のような説明がされている。
Notice
If you feel that someone from your company may be staying at this hotel and using VPN or if you are using advanced applications, it is recommended that you select this option.
There is no charge for this feature.
ヒルトンのインターネット接続サービスが通信速度で料金に差をつけているということは、ユーザごとに帯域制御(速度制御)しているということになる。英文の説明にあるように、VPN ユーザ用のチェックボックスをオンにすることによって、多少なりとも帯域保証(QoS = Quality of Service)がなされ、快適に利用できるのかどうかまではわからない。両方ためしてみたが体感的に差は感じなかった(VPN 接続では暗号化などの影響で、通常以上に通信量が増えることが一般的である)。
ちなみに私の勤務する会社で従業員向けに提供しているインターネット VPN 接続サービスでは、速度こそ満足とはいえなかったものの、いつもの手順で通信を確立することができた。
15:00ころになって母も起き上がり、ヒルトンの庭をひとまわりしようということになる。
我々が泊っている「レインボータワー」と呼ばれる客室棟は、海側と陸側の外壁いっぱいに虹が描かれている。旅行パンフレットなどで見る写真に、たいてい出てくるものだ。そのタワーの前には、このビレッジで最も大きいらしい「スーパー・プール」がある。泳ぐ人はもちろん、デッキチェアでくつろぐ人たちなど、みな思いおもいの休日を過ごしている。
このプールもふくめてビレッジ内には、宿泊者でなければ入れない施設がいくつかある。チェックイン時に受け取るリストバンドが宿泊者であることの表示となる。しかし、母も私もプールにはとんと縁のない人間なので、このリストバンドにありがたみは感じない。
きょうは、とくに出かけることはせず、このビレッジ内を散歩する程度にしておいて正解だ。レインボー・タワーのすぐそばにあるデューク・カハナモク・ラグーンでは、数人の欧米人男性が、サーフボードのうえに立ったままパドルを使って前に進む「パドル・ボード」とかいうものにチャレンジしている。このラグーンは波がないため、バランスをとって水面を滑るように進む基本練習には、もってこいなのかもしれない。
そのまま小路をゆっくりと歩き、ラグーン・タワー、グランド・ワイキキアンのロビーなどを見物する。どちらのタワーもウッディで重厚な仕上げの内装となっており、ここにタイムシェアで部屋を持っているというのも、いいものだなぁと感じる。しかし1か月のバカンスなどという概念自体がない日本のサラリーマンでは、タイムシェアの利用の仕方にも工夫がいるかもしれない。
ロビーでは、数人のバンドの前で女性がフラを踊って、ロビーにいる客たちを楽しませている。ほんの十数人のギャラリーしかいないが、そこがまた親近感があっていい雰囲気だ。少し進むとオレンジジュースを無料で配っているスタンドが設けられている。なんだか、だんだんと「世界のヒルトン」の強さと余裕を見せつけられている気分になってくる。
ところどころにおいてある椅子やソファに腰掛けて休んだり、庭の木々や鳥たちの様子を眺めたりしながら、ゆっくりまわってフロント・デスク横にあるコンシェルジュ・デスクのところまできた。もうあたりは、日が沈んだせいで、昼とは違った雰囲気になっている。レストランやカフェにある松明(たいまつ)の炎が揺らめいている。
コンシェルジュの男性に話しかけてみると、日本語でまったく問題ない。それで、さっきから気になっていたことを聞いてみることにした。
「私は勤務先のものとプライベートのものと、2枚のラップトップを持ってきているのですが、部屋のインターネット接続は、1台ごとに料金がかかるのですか?」
男性は念のためフロントデスクの女性に確認してくれたが、予想通り複数のコンピュータの場合は、それぞれに課金が別になってしまうとのことだ。まったくもってけしからん。
Cookie で制御しているのだろうと思い、後で Cookie エディタを使ってなんとか1台分の課金で済まそうなどとも考えたのだが、面倒くさいのでやめた。
今夜は散歩がてらワイキキまで行き、和食を食べて部屋に戻る。











