花ぷら10.5(2008/4)
搭乗口手前にたくさん並ぶ椅子に座り、車いすの伯母や母に、いろいろと旅の説明などをしていると、搭乗口の係の女性がやってきて、優先搭乗などについて説明してくれる。そしてラウンジで待つことをすすめてくれる。 そうそう、ラウンジを利用せねば。なんだか損を取り戻しにいくような雰囲気で、3人でエレベータに乗って4階へ移動する。ラウンジは搭乗口に近いので移動には便利だ。
第4サテライトのシースルーのエレベータで4階に上がり、ラウンジの方へ進む。おお、入口からしてゴージャス。その入口へ進むと、落ち着いた高級感漂う天井まで届こうかという背の高いドアが、大きく左右に、静かに、しかし素早く開く。その奥、正面にこれまた重厚な感じのカウンターが左右に広がる。ドアを入ったこのあたりは、ほのかに温かみのある間接照明で彩られ、床や壁も美しく輝いている。しかしこの位置からは、ラウンジ内の様子をうかがい知ることができない構造になっている。
その高級な空間の受付カウンタに、4~5人の女性たちがズラリと並んでスタンバイしている。入口の自動ドアからカウンタに進むまで、ちょっとだけ距離がある。入口の空間が広いのだ。数人の女性の視線を受けながら、その方向へ向かって数歩あるくだけの距離と時間が、なんだか長く感じてしまう。女性たちが笑顔で我々の方だけを向いて立っているわけだから、一人の女性を選ぶような感じで進むことになってしまうので、なにかこう、罪悪感のようなものすらも感じつつ、少し汗ばんできた。
それでも、カウンタの女性に「LOUNGE INVITATION CARD」を差し出して、なんだかひと仕事終えたように、肩で息をつきながら、あたりの様子を見まわしてみる。
「お客様、恐れ入りますが、お客様のラウンジは2階になります。こちらはファーストクラスのお客様のラウンジでございまして...」
あ、あいや~。
なにか、とんでもない恥ずかしい間違いをしてしまったような気分で、そそくさとファーストクラスラウンジを出る。さきほどのシースルーのエレベータで今度は2階へ降りる。しかし、ビジネスクラス用のラウンジも、入口だけはほとんど変わらないような気がする。「LOUNGE INVITATION CARD」を見せて、奥へ進む。
インテリアは落ち着いたこげ茶色を基調としており、椅子や通路など、すべてにおいてゆったりした空間になっている。あまり明るすぎない室内、音を吸収する室内の素材、それほどたくさんの客がいないことなどによって、静かでゆったりした空間となっている。他のラウンジ利用者とも視線がぶつからないような工夫もしてある。
少し離れた所にある飲み物や軽食が並んだコーナーでは、食器が軽く触れ合う音がするが、それも耳に痛くない。もちろん車いすでも、らくらくである。適当なソファに腰かけて、ひと息つく。生ビールもふくめ各種アルコール類がセルフサービスで飲めるのだが、今回はやめておこう。
伯母は、緑茶とあられのような米菓が好物なので、そんなものと小さくカットされたサンドイッチなどをみつくろってくる。そもそも、さっきそばを食べたばかりでほとんど腹はすいていない。いやしかし、ANA のミックスあられはうまいな。ふと見ると、うどんやそばのサービスもある。そこだけは、ラウンジの中でも一段高い床の、連子(れんじ)で仕切られた空間になっており、その連子の隙間からのぞいてみると、社員食堂のような窓口でどんぶりを受け取り、テーブルに座って食べることができるようになっている。
トイレから母が戻ってきた。さすがにラウンジのトイレは使いやすい、と絶賛している。一般の飲食店であれ、デパートであれ、トイレを見ればその店や企業の姿勢がわかるというが、これはかなり正しいだろう。設備の古い新しいではなく、きちんと清掃・手入れされたトイレの店なら、まず「ハズレ」はない。もっとも、集合施設や大規模店舗では、清掃会社などに丸投げしているので、従業員がトイレ清掃する店とは同じレベルでは論じられないかもしれないが。
そろそろ搭乗開始の時刻がちかい。 エレベータでひとつ上にあがれば搭乗口なので、決して慌てることはないのだが、車いすを伴っていることによる優先搭乗扱いになるため、少し早めに行っておかないと、他の乗客や係員に迷惑になることも考えられる。
さっき搭乗口で案内された早目の時刻に合わせてラウンジを出る。搭乗口前に広がる待合用の椅子には、だいぶ人が集まってきている。しかし、じゅうぶんな空間と椅子があるため、窮屈な感じはない。我々は、搭乗口近くの空いた席を見つけて腰を下ろす。
ほどなくして、優先搭乗が始まる。我々のほかに、赤ちゃんを連れた人々などが搭乗口を通過する。折りたたみ式のベビーカーを持参している人は、このタイミングでベビーカーをたたみ、航空会社のカバーをかけて係りに渡すことになる。搭乗口では何組かの赤ちゃん連れのひとたちが、あたふたと荷物を扱ったり、つきまとう上の子どもの面倒を見ている。
ビジネスクラスのシートに腰を下ろす。やはりゆったりしていて体が楽だ。エコノミークラスだと、決して太っていない人であっても、座席に身を押しこめるような感じになってしまい、つねにキチンと座っていることを余儀なくされる。たしかにビジネスクラスは高い運賃が必要ではあるが、仮にこの年寄りをエコノミークラスで旅行させたとしたら、体調を崩したり、機内でのトラブルなどで周囲の乗客に迷惑をかけたりする可能性は高くなる。そして同行者のストレスや疲労も大変なことになり、苦い思い出の旅行になりかねない。そんなことを思えば、ビジネスクラスを選択する意味、値打ちはじゅうぶんにあると思う。








